マンションを人の身体になぞらえれば、隠蔽されている給水管や排水管は血管のようなものです。
血液ドロドロは、人間であればいろいろな病気を、マンションであれば漏水事故を引き起こします。マンション暮らしにおいて、漏水事故はとても嫌なものですから、共用部分、専有部分ともに管の適切な維持管理が必要になります。
しかし、外壁や防水の補修工事は着手しやすいのですが、管の工事は劣化状況が目に見えないため、後回しになってしまう傾向が強いようです。
マンションの見かけがどんなに綺麗でも、管がボロボロで漏水が頻発していては、そこで快適に生活していくことはできません。管の改修こそ、計画修繕を行う必要があるとセンターではアドバイスしています。
管理規約にそれぞれ、管理組合が維持管理する共有部分と個人が維持管理すべき専有部分が明記されているはずです。お部屋の中にある管は、基本的には専有部分であり、その改修や漏水の責任は区分所有者にあります。
ただ、設計上、個人では修繕しえない場所に管があるマンションもありますので、そうした場合には、たとえ、専有部分でも管理組合の責任で工事することになります。
内装工事(リフォーム)にあわせて専有部内の配管を取替工事(更新)するということです。
はい。ただ、その際は、規約改正、専有部分の費用負担をどうするか、長期修繕計画に専有部分も併せて工事することを明記する、すでに自分で改修した人の取り扱いなどのさまざまな取り決めが必要になります。
一概には言えません。取り付けた業者の腕にも左右されます。大まかなことは配管の材質、水質などにより判断できますが、詳しくは配管の劣化診断が必要です。
調査方法としては目視調査(外観調査)抜管調査(管の抜き取り調査)内視鏡調査(管の内面にカメラを入れる調査)超音波検査(管の肉厚調査)X線調査(レントゲン撮影による劣化度合いの調査)などがあります。
配管の材質、配管の場所により調査方法、調査個所を決めて調査を行います。
調査費用は調査対象、調査量、調査方法により変わりますので一概には言えませんが、100所帯ぐらいのマンションでしたら30~50万円程度だと思われます。
調査個所などは多くすればするほど診断の精度は上がりますが、それだけ費用がかさみます。最適な診断をするには専門家に相談することが必要です。
今の管を延命させるという更生工事という手法があります。代表的なものがライニング工法です。これは管の内面を樹脂コーティングし、錆などによる劣化を防ぐ工法です。
更生工事と言っても、ライニング以外にも多くの工法があり、各工法には適用対象、特色、メリット、デメリットがありますので、選定の際は注意が必要です。
更生工法は管を取り替える更新工事と違い、最小限の内容工事で済みますから、工事日数が少ないなどのメリットがあります。また、多くの工法は更新工事より安価です。
ただ、マンションの寿命を60年と考えた場合、更生工法を繰り返し行い、トータルでは更新工法のほうが安かったということが無い様に考慮することも必要です。また、昨今は更新工事も安価に行えるようになってきました。
今後はおいしい水が供給できるということで、直結給水は増えていくと思われます。
直結給水とは受水槽、高架水槽などのタンクをなくし、水道本管より直接各戸の水栓に水を供給する方式です。
受水槽があることで、非常時の水の確保ができるという評価もありますが、受水槽の多くは、その建物の約半日分の使用量しか蓄えていません。また、その水は飲料水には使えないと思われます。
直結にすることで、水がおいしくなる、水槽の清掃がいらなくなる、水槽の跡地を有効利用できる可能性があるなどのメリットがあります。
水槽の更新時期を迎えた場合には、前向きに検討されるべきだと考えます。配管は耐用年数を過ぎたからすぐに水漏れを起こすとは限りません。しかし、水漏れは資産への多大な被害だけでなく、精神的な苦痛やトラブルを生みますので、外壁や防水以上に計画的な修繕を行う必要があります。
多くの場合、劣化の進行が進んだ管から優先順位を付けますが、同じ場所に優先順位の低い配管があれば同時に工事することも検討すべきです。配管の多くは内装等壁の中に隠れており、何度も解体するよりも1回で終わらせたほうが得策になることがあります。
給排水管の改修は方法、範囲等多岐にわたり選択できるので、慎重に進めることが重要です。特に給排水管工事は専有部内の工事も発生することが多く、居住者の同意を得るために時間がかかります。
まずは信頼できる相談者を見つけることです。
共同住宅の改修は新築工事と違い、竣工当初の材料、工法に精通している必要があり、居住しながらの工事ということで経験も必要となります。
改修工事コンサルタントなどの専門家に依頼することをお勧めします。
信頼できる相談者が見つかりましたら、配管の劣化診断をしましょう。
それにより現状を把握でき、必要な工事範囲、優先順位のアドバイスが出てくるでしょう。