長期修繕計画の作成・見直し

新築マンションを購入する際に、売主から渡される「長期修繕計画」は数ページの簡素なものであることが一般的です。修繕積立金を安く設定したほうが売りやすいため、修繕積立金を段階的に上げる、または、大きな工事の際に一時金を徴収する計画になっている場合があります。
しかし、数千万円の買い物をしようという時にそんなことを深く考える人は少なく、皆さんが長期修繕計画を関心を持って見るようになるのは、1回目の大規模修繕工事が現実味を帯びてくる築10年を過ぎた頃かもしれません。1回目の大規模工事は修繕積立金基金もあり、なんとか実施できても、その後に五月雨式にインターホン、給水ポンプ、エレベーター、機械式駐車場、給水管といった設備の取替え工事が続く15年から35年までの間は修繕積立金が不足しがちです。そこをどう乗り切るかと考えをめぐらすための大切な資料が長期修繕計画なのです。
もともと、長期修繕計画には、管理規約や委託契約書のように標準となる雛型がなく、どう作るかは作成者に任されていました。2008年(平成20年)に、国土交通省は長期修繕計画作成のガイドラインを示し、さらに、管理会社と管理組合が締結する標準管理委託契約書から「長計作成には多額の費用と時間がかかる」として長期修繕計画の作成の業務を外し、現在、多くの管理会社が長計の作成を別途契約としています。
『サンデー毎日』(2015年3月29日特大号)に掲載された記事の中で、修繕積立金値上げに悩む組合に対してセンターは次のようにアドバイスしています。
「まずは、管理会社が示す『長期修繕計画』が妥当なものであるかどうか、管理組合で検討する必要があります。修繕工事の内容、範囲、費用が適切かどうか。ただし、膨大な計画を読み込むことは素人には正直難しい。第三者の目を入れて精査することが大事です。」
「修繕に完璧をもとめればキリがない。所有者の集まりである管理組合と管理会社とは修繕のコンセプトがずれていることもよくある。身の丈以上の修繕は不要という考え方もあるでしょう。管理組合の皆さんがどこまで折り合うか。専門家を交えて考えたほうがいい。」
本来、長期修繕計画とはこのぐらいの時期にこのような工事が必要になるという計画であり、実行は劣化状況に応じて先送りしたり、資産価値向上のため、前倒しすればよいのですが、長期修繕計画通りに改修をしてしまう組合も多いため、ある程度精度の高い長期修繕計画作成が必要です。工事費を過大に見積もられればそれに基づく支払いも過大になり、修繕周期を早めに設定されれば、やはり費用が足りなくなります。
また、このところ、長期修繕計画書に計上されている工事項目をセンターの一級建築士からアドバイスを受けながら理事会が主体的に検討するケースも増えてきています。
適切なプランを持つこと、そして適切な時期に実行すること、これが大切です。