マンションの一般的な修繕周期

マンションの一般的な修繕周期

長期修繕計画作成ガイドライン改定
大規模修繕工事周期が12年~15年へ

2022年4月に施行された「マンション管理計画認定制度」ですが、自治体での準備が遅れ、実際に認定を受けた組合は管理組合全体からみるとかなり少ないのが現状です。 国土交通省は2021月9月に2008年に発表した「長期修繕計画標準様式及び作成ガイドラン」を改訂しており、これは管理計画認定の基準に含まれております。

主な改訂点は以下の通りです。

①ガイドラインの目的に省エネ性能向上のための改修工事実施(窓の断熱改修工事など)を追加

「築古のマンションは省エネ性能が低い水準にとどまっているものが多く存在していることから、大規模修繕工事の機会をとらえて、マンションの省エネ性能を向上させる工事を実施することは脱炭素社会の実現のみならず、各区分所有者の光熱費負担を軽減させる観点からも有意義」としています。

②大規模修繕工事の周期の目安が「12年」から「12年~15年」に変更

大規模修繕工事は定期的に繰り返され、費用も莫大です。12年ごとに行えば60年で5回、15年ごとに行えば60年で4回と差が生じます。建物の状態がよければさらに修繕周期は伸ばすことができると考えられます。

③長期修繕計画の期間を変更

新築マンションは30年、既存マンションは25年とされていましたが、今回の改訂で、既存マンションも2回の大規模修繕工事を含む30年以上と変更されました。

④長期修繕計画の見直し期間を5年程度と明記

改訂前は「一定期間ごとに見直す」とされていましたが、今回、「一定期間(5年程度)ごとに見直す」と変更されました。
 マンション管理認定制度の認定基準では「長期修繕計画の見直しが7年以内に行われていること」とされています。これは計画の見直しを5年程度で行ったとしても、それを総会で議決する必要があるため、その準備期間などを考慮すると、計画見直しから議決までで7年程度と考えているのだと思います。

マンションの修繕積立金に関するガイドラインも10年ぶりに改訂

「長期修繕計画標準様式・作成ガイドライン」の改訂に併せ、「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」も見直しが行われました。このガイドラインは長期修繕計画作成ガイドラインに概ね沿って作成された長期修繕計画366事例を収集・分析したものであり、あくまでも目安です。

月額の専有面積当たりの修繕積立金額

修繕積立金の平均額の目安

※機械式駐車場がある場合の加算額も示されてはいますが、「機械式駐車場には屋外・屋内、地下、地上等のさまざまなタイプがあるため、修繕工事費は個別性が高いことに留意しつつ、適宜ご参照ください」とされています。

管理組合では、専用庭、駐輪場、駐車場などの使用料を徴収しています。それらは全額管理費に入れ、管理費の収入として費消しているケースが目立ちます。ガイドラインでは、「専用庭等の専用使用料及び駐車場等の使用料は、それらの管理に要する費用に充当する額を差し引いた額を修繕積立金に繰り入れます。」と断言しています。
 そして、繰入れの方法については①専用使用料等の内一定額または一定割合を自動的に繰り入れる方法②駐車場使用料会計等の個別の修繕のための会計に繰り入れる方法③一旦管理費会計に繰り入れた上で、定期的に修繕積立金会計に繰り入れる方法があるとしています。

資材や人件費が高騰 さらなる改訂もありうるかも

この3年間で21管理組合の長期修繕計画を作成した金子友彦一級建築士によれば、修繕積立金が現状維持でも不足しないという結果になったのはわずか2管理組合だけとのことです。それらの組合はかなり早い段階で修繕積立金を値上げしていたことが功を奏したようです。竣工時からまったく見直しをしていない組合では、86円/㎡⇒347円/㎡、136円/㎡⇒543円などの大幅な値上げが必要という結果になっています。
 ガイドラインの改訂は10年ぶりでしたが、ここ1年の資材等の値上りはすさまじいものがあります。大規模修繕工事の工事費もそうですが、エレベーターの油圧式からロープ式への変更工事などは半年で300万円程度上がった印象があります。近々、さらなるガイドラインの金額の改定がある可能性も可能性も高く、管理組合にとってはますますお金が足りないという、厳しい時代になりそうです。